DNSサーバー設定方法
1. 通信速度の向上(名前解決の高速化)
- DNSサーバーの応答速度の改善: プロバイダが提供するDNSサーバーは、利用者が多く混雑しやすかったり、必ずしも最新の設備が導入されていなかったりする場合があります。一方、GoogleやCloudflareのような大手IT企業が提供するパブリックDNSサーバーは、高性能なサーバーと世界中に分散されたネットワークを利用しているため、名前解決(ドメイン名からIPアドレスへの変換)の応答が高速です。
- ウェブサイトの表示開始時間の短縮: DNSの名前解決が速くなることで、ウェブサイトの読み込み開始が速くなります。特に、複数のドメインからリソースを読み込むウェブサイトでは、その効果を実感しやすいでしょう。
- ゲームの接続改善: オンラインゲームにおいて、ログインやマッチング時にDNSが利用されることがあります。高速なDNSサーバーに変更することで、これらの接続時間が短縮される可能性があります。ただし、ゲームプレイ中のラグや遅延(レイテンシ、ping)は、物理的な距離や回線の混雑状況に大きく依存するため、DNS変更だけで劇的に改善するわけではありません。
2. セキュリティとプライバシーの強化
- 悪意のあるサイトからの保護: 一部のパブリックDNSサーバー(例: Cloudflareの1.1.1.2/1.1.1.3、OpenDNS)は、フィッシングサイト、マルウェアサイト、詐欺サイトなどの既知の悪意あるドメインへのアクセスを自動的にブロックする機能を提供しています。これにより、誤って危険なサイトにアクセスしてしまうリスクを低減できます。
- プライバシーの保護: ISPのDNSサーバーの中には、ユーザーのアクセス履歴を記録・分析しているものもあります。プライバシーを重視するパブリックDNSサーバー(例: Cloudflareの1.1.1.1、Quad9)は、ユーザーのIPアドレスやアクセスログを保存しないポリシーを採用していることが多く、オンラインプライバシーの保護に役立ちます。
- DNSSECのサポート: DNSSEC(DNS Security Extensions)は、DNS応答の信頼性を検証する技術です。これにより、DNSスプーフィングやキャッシュポイズニングといったDNS関連の攻撃から保護することができます。多くのパブリックDNSサーバーはDNSSECをサポートしています。
- DoH/DoTの利用: DNS over HTTPS (DoH) や DNS over TLS (DoT) といった技術を利用することで、DNSクエリが暗号化され、盗聴や改ざんのリスクを軽減できます。これにより、フリーWi-Fiなどの安全性の低いネットワーク環境でも、より安全にインターネットを利用できます。
3. その他の機能と柔軟性
- コンテンツフィルタリング: OpenDNSのように、アダルトコンテンツやギャンブルサイトなど、特定のカテゴリのサイトへのアクセスをブロックするフィルタリング機能を提供するDNSサーバーもあります。これは、家庭での利用や企業環境での利用において、不適切なコンテンツへのアクセスを制限したい場合に便利です。
- プロバイダの障害回避: プロバイダのDNSサーバーが障害を起こした場合、インターネットに接続できなくなることがあります。別のパブリックDNSサーバーに変更しておくことで、そのような障害の影響を受けずにインターネットを継続して利用できる可能性が高まります。
- 特定の地域限定コンテンツへのアクセス改善: ごく稀に、特定のコンテンツやサービスへのアクセスが、利用しているDNSサーバーのルーティングによって制限されることがあります。DNSサーバーを変更することで、これらのアクセスが改善されるケースもあります。
注意点
- 劇的な速度向上は期待できない場合も: DNS変更は「名前解決」の速度を改善するものであり、ダウンロード速度や動画のストリーミング速度など、データ転送そのものの速度が劇的に向上するわけではありません。回線そのものの速度や、ウェブサイトのサーバー側の問題による遅延は、DNS変更では解決できません。
- 信頼できるDNSサーバーの選択: 悪意のある第三者が運営するDNSサーバーに変更してしまうと、かえってセキュリティリスクを高める可能性があります。GoogleやCloudflareなどの信頼できる有名どころのパブリックDNSサーバーを利用するようにしましょう。
- 設定の知識: DNSサーバーの変更は、OSやルーターの設定で行いますが、ある程度の基本的なネットワーク知識が必要です。
iPhoneのDNSサーバー設定方法(Wi-Fi接続)
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「設定」アプリを開く
- ホーム画面から歯車アイコンの「設定」アプリをタップします。
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「Wi-Fi」をタップする
- 設定メニューの中から「Wi-Fi」をタップします。
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現在接続しているWi-Fiネットワークの「i」アイコンをタップする
- 現在接続中のWi-Fiネットワーク名の右側にある青い「i」(情報)アイコンをタップします。
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「DNSを構成」をタップする
- ネットワークの詳細設定画面を下へスクロールし、「DNSを構成」をタップします。
-
「手動」を選択する
- デフォルトでは「自動」が選択されていますが、これを「手動」に切り替えます。
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既存のDNSサーバーを削除(任意)
- すでにDNSサーバーがリストされている場合(通常はISPのDNS)、その横にある赤い「-」アイコンをタップし、「削除」をタップして削除します。
- (メモしておけば、後で元に戻すことも可能です)
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新しいDNSサーバーを追加する
- 「+ サーバを追加」をタップします。
- 入力欄に、使用したいDNSサーバーのIPアドレス(例:Google Public DNSの「8.8.8.8」)を入力します。
- 複数のDNSサーバーを設定したい場合は、再度「+ サーバを追加」をタップして2つ目のDNSサーバー(例:Google Public DNSの「8.8.4.4」)を入力します。通常はプライマリとセカンダリの2つを設定します。
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「保存」をタップして完了
- 画面右上の「保存」をタップして設定を適用します。
これで、選択したWi-Fiネットワークに接続している間は、指定したDNSサーバーが使用されるようになります。
おすすめのパブリックDNSサーバー
いくつか人気のパブリックDNSサーバーを挙げます。
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Google Public DNS
- IPv4:
8.8.8.8
と8.8.4.4
- 特徴: 高速で安定しており、世界中で利用されています。
- IPv4:
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Cloudflare DNS
- IPv4:
1.1.1.1
と1.0.0.1
- 特徴: 世界最速クラスと言われ、プライバシー保護に力を入れています。
- マルウェアブロック機能付き:
1.1.1.2
と1.0.0.2
- マルウェア・アダルトコンテンツブロック機能付き:
1.1.1.3
と1.0.0.3
- IPv4:
-
Quad9
- IPv4:
9.9.9.9
と149.112.112.112
- 特徴: セキュリティに特化しており、既知の悪意のあるドメインへのアクセスをブロックします。
- IPv4:
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OpenDNS
- IPv4:
208.67.222.222
と208.67.220.220
- 特徴: カスタマイズ可能なフィルタリング機能が豊富で、家庭や教育機関での利用に適しています。
- IPv4:
AndroidスマートフォンでのDNSサーバー設定方法は、Androidのバージョンや機種によって若干の違いがありますが、主に以下の2つの方法があります。
- Wi-Fi接続ごとのDNS設定 (手動IP設定)
- プライベートDNS (DNS over TLS/HTTPS) - Android 9以降で利用可能
それぞれの設定方法を解説します。
1. Wi-Fi接続ごとのDNS設定(手動IP設定)
この方法は、接続している特定のWi-Fiネットワークに対してDNSサーバーを設定します。
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「設定」アプリを開く
- ホーム画面から「設定」アプリ(歯車アイコン)をタップします。
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「ネットワークとインターネット」または「接続」をタップする
- メニュー名はお使いの機種によって異なります。
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「Wi-Fi」をタップする
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現在接続しているWi-Fiネットワークの歯車アイコンをタップする
- 接続中のWi-Fiネットワーク名の右側にある歯車アイコン(または「i」アイコン)をタップします。
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「編集」または「このネットワークを管理」をタップする
- 画面上部にあるペンアイコンや「編集」ボタンをタップします。
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「詳細オプション」を展開する
- 通常は「詳細オプション」や「詳細設定」のような項目があるので、タップして展開します。
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「IP設定」を「DHCP」から「静的」に変更する
- 「IP設定」または「IPアドレス設定」という項目を見つけ、「DHCP」から「静的」(または「固定」)に切り替えます。
- 重要: ここでIPアドレスを「静的」に変更すると、現在のIPアドレス、ゲートウェイ、ネットワークプレフィックス長(サブネットマスク)が自動的に入力されるか、自分で入力する必要があります。これらの情報をメモしておくか、既存の情報をそのまま利用してください。特にIPアドレスは、他のデバイスと競合しない範囲で設定する必要があります(通常は既存のIPアドレスの末尾の数字を少し変えるなど)。
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DNSサーバーのIPアドレスを入力する
- 「DNS 1」と「DNS 2」の欄に、使用したいDNSサーバーのIPアドレスを入力します。
- 例: Google Public DNS の場合
- DNS 1:
8.8.8.8
- DNS 2:
8.8.4.4
- DNS 1:
- 例: Cloudflare DNS の場合
- DNS 1:
1.1.1.1
- DNS 2:
1.0.0.1
- DNS 1:
- 例: Google Public DNS の場合
- 「DNS 1」と「DNS 2」の欄に、使用したいDNSサーバーのIPアドレスを入力します。
-
「保存」をタップして完了
- 画面右下や上部にある「保存」ボタンをタップして設定を適用します。
2. プライベートDNS (DNS over TLS/HTTPS)
Android 9 (Pie) 以降のAndroidデバイスでは、「プライベートDNS」という機能が導入されており、DNS over TLS (DoT) や DNS over HTTPS (DoH) を利用してDNSクエリを暗号化できます。これは、モバイルデータ通信を含むすべてのネットワーク接続に適用されるため、非常に便利です。
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「設定」アプリを開く
- ホーム画面から「設定」アプリをタップします。
-
「ネットワークとインターネット」または「接続」をタップする
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「プライベートDNS」をタップする
- もし見つからない場合は、設定アプリの検索機能で「プライベートDNS」と入力して検索してみてください。
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「プライベートDNSプロバイダのホスト名」を選択する
- 通常、「オフ」「自動」「プライベートDNSプロバイダのホスト名」の3つのオプションがあります。
- 「プライベートDNSプロバイダのホスト名」を選択します。
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DNSプロバイダのホスト名を入力する
- 入力欄に、使用したいプライベートDNSプロバイダのホスト名を入力します。
- 例: Google Public DNS の場合:
dns.google
- 例: Cloudflare DNS の場合:
one.one.one.one
または1dot1dot1dot1.cloudflare-dns.com
- 例: Quad9 の場合:
dns.quad9.net
- 例: Google Public DNS の場合:
- 入力欄に、使用したいプライベートDNSプロバイダのホスト名を入力します。
-
「保存」をタップして完了
おすすめのパブリックDNSサーバー(ホスト名)
プライベートDNSでよく使われるホスト名です。
- Google Public DNS:
dns.google
- Cloudflare DNS:
one.one.one.one
または1dot1dot1dot1.cloudflare-dns.com
- Quad9:
dns.quad9.net
(セキュリティ重視) - AdGuard DNS:
dns.adguard.com
(広告ブロック機能付き)
注意事項
- Wi-Fiごとの設定 vs プライベートDNS:
- Wi-Fiごとの設定: そのWi-Fiネットワークにしか適用されません。ルーターの設定を変更したくない場合や、特定のWi-FiだけDNSを変えたい場合に利用します。IPアドレスの「静的」設定は、ネットワークの知識がないとトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。
- プライベートDNS: Android 9以降であれば、こちらの方がシンプルで、Wi-Fiだけでなくモバイルデータ通信にも適用されるため、おすすめです。ただし、すべてのDNSプロバイダがプライベートDNS用のホスト名を提供しているわけではありません。
- OSのバージョンや機種による違い: 上記手順は一般的なものですが、お使いのAndroidのバージョン(特に古いバージョン)やメーカー(Samsung、Xperia、Pixelなど)によって、メニュー名や手順が多少異なる場合があります。
- アプリの利用: DNSチェンジャー系のアプリ(例: Google Playストアにある「DNS Changer」など)を利用すると、より簡単にDNSサーバーを変更できる場合もあります。特にモバイルデータ通信のDNSを変更したい場合は、アプリの利用が選択肢になります。
ご自身のAndroidデバイスのバージョンと目的に合わせて、最適な方法を選択してください。
Windows PCのDNSサーバー設定方法(設定アプリを使用)
この方法は、有線LAN(イーサネット)とWi-Fiの両方に適用できます。
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「設定」アプリを開く
- スタートメニューから: スタートボタン(Windowsロゴ)をクリックし、歯車アイコンの「設定」をクリックします。
- ショートカットキー:
Windowsキー
+I
を押します。
-
「ネットワークとインターネット」を開く
- 設定メニューの左側にある「ネットワークとインターネット」をクリックします。
-
アダプターの選択
- 現在接続しているネットワークの種類(「Wi-Fi」または「イーサネット」)をクリックします。
- Wi-Fiの場合: 接続中のWi-Fiネットワーク名が表示されているので、それをクリックします。
- イーサネットの場合: 「イーサネット」をクリックします。
- 現在接続しているネットワークの種類(「Wi-Fi」または「イーサネット」)をクリックします。
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「DNSサーバーの割り当て」の「編集」をクリックする
- 画面を下にスクロールしていくと、「DNSサーバーの割り当て」という項目があります。その右側にある「編集」ボタンをクリックします。
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「手動」を選択する
- プルダウンメニューが表示されるので、「自動 (DHCP)」から「手動」に切り替えます。
-
IPv4またはIPv6をオンにし、DNSサーバーのIPアドレスを入力する
- 「IPv4」または「IPv6」のトグルスイッチを「オン」にします。通常は「IPv4」で十分です。
- IPv4の場合:
- 「優先DNS」の欄に、プライマリDNSサーバーのIPアドレスを入力します。
- 「代替DNS」の欄に、セカンダリDNSサーバーのIPアドレスを入力します。
- IPv6の場合(必要な場合のみ):
- 「優先DNS IPv6」の欄に、プライマリIPv6 DNSサーバーのIPアドレスを入力します。
- 「代替DNS IPv6」の欄に、セカンダリIPv6 DNSサーバーのIPアドレスを入力します。
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「保存」をクリックして完了
- 右下にある「保存」ボタンをクリックして設定を適用します。
コントロールパネルからの設定方法(旧来の方法)
Windows 11でもこの方法はまだ利用できますが、設定アプリの方が推奨されています。
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「コントロールパネル」を開く
- スタートボタンを右クリックし、「ファイル名を指定して実行」を選択します。
- 「ncpa.cpl」と入力してEnterキーを押します。(これにより、「ネットワーク接続」ウィンドウが直接開きます。)
- または、スタートボタンを右クリックし、「設定」→「ネットワークとインターネット」→「ネットワークの詳細設定」→「その他のアダプターのオプション」をクリックします。
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ネットワークアダプターのプロパティを開く
- 使用しているネットワーク接続(「Wi-Fi」または「イーサネット」)を右クリックし、「プロパティ」を選択します。
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インターネットプロトコルの選択
- 「この接続は次の項目を使用します」のリストから、「インターネット プロトコル バージョン 4 (TCP/IPv4)」を選択し、「プロパティ」ボタンをクリックします。
- IPv6も設定したい場合は、「インターネット プロトコル バージョン 6 (TCP/IPv6)」も同様に設定します。
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DNSサーバーのIPアドレスを入力する
- 「次の DNS サーバーのアドレスを使う」を選択します。
- 「優先 DNS サーバー」と「代替 DNS サーバー」の欄に、使用したいDNSサーバーのIPアドレスを入力します。
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「OK」をクリックして完了
- すべてのウィンドウで「OK」をクリックし、設定を適用します。
おすすめのパブリックDNSサーバー
- Google Public DNS
- IPv4:
8.8.8.8
と8.8.4.4
- IPv6:
2001:4860:4860::8888
と2001:4860:4860::8844
- IPv4:
- Cloudflare DNS
- IPv4:
1.1.1.1
と1.0.0.1
- IPv6:
2606:4700:4700::1111
と2606:4700:4700::1001
- (セキュリティ強化版やコンテンツフィルタリング版もあります)
- IPv4:
- Quad9
- IPv4:
9.9.9.9
と149.112.112.112
- IPv6:
2620:fe::fe
と2620:fe::9
- IPv4:
注意事項
- 接続の種類に注意: 有線LANとWi-Fiは別々に設定が必要です。PCが両方に接続する可能性がある場合、両方の設定を確認してください。
- 元に戻せるようにメモ: 現在設定されているDNSサーバーのアドレスを控えておくことをお勧めします。もし新しいDNSサーバーで問題が発生した場合、元に戻すことができます。
- 設定の反映: 設定を変更した後、ネットワーク接続を一度無効にしてから再度有効にする、またはPCを再起動すると、設定が確実に反映されます。
- IPアドレスの自動取得とDNSの自動取得: 通常、ルーターやISPからIPアドレスとDNSサーバーのアドレスは自動的に割り当てられます。手動でDNSサーバーを設定する場合でも、IPアドレスは「自動的に取得する」のままにしておくのが一般的です。IPアドレスまで手動で設定する場合は、ネットワークに関する専門知識が必要となり、IPアドレスの競合などの問題が発生する可能性があります。
これらの手順で、Windows PCのDNSサーバーを目的のアドレスに変更することができます。